マンション経営における敷金・礼金について

マンション経営やアパート経営においては、部屋を借り際の敷金・礼金が当たり前とされていたこともありますが、現代においては敷金・礼金について人々の意識も変わっています。

そもそも敷金・礼金とは?

まずは不動産経営における敷金・礼金の成り立ちや意味を理解しておきましょう。

敷金

敷金は、マンションを借りたり貸したりする際に、入居者からオーナーや管理会社へ支払われる保証金のような意味のお金です。

例えば、家賃滞納時に敷金として前払いされているお金から充当したり、退去時に部屋の補修や修繕、クリーニングなどが必要になった際に敷金で費用をカバーしたりといった使い方がされていました。

つまり敷金はオーナーにとっても入居者にとっても互いにリスクを回避して、トラブルへの心配を解消しながら有効的な賃貸契約を結ぶためのお金と考えることが可能です。そのため敷金は退去時に一部もしくは全部が入居者へ返金されるという性質を備えています。

一般的に敷金は家賃の1~2ヶ月分くらいが相場とされていますが、昨今では敷金をゼロにして代わりに保証金などを設定していることもあります。

礼金

礼金はそもそも、文字通り感謝やお礼の気持ちとして入居者からオーナーへ支払われてきたお金です。そのため敷金と違って返金の必要はありません。

かつてはマンションやアパートを所有している人や物件が現代ほど多くなく、部屋を借りたいというニーズに対して賃貸物件の需要は限定的でした。そのため、入居者はオーナーに対して「部屋を貸してくださりありがとうございます」という感謝の印として礼金を支払うという文化がありました。

しかし現代では不動産経営やマンション経営はあくまでもビジネスであり、入居者とオーナーは対等関係で部屋の賃貸契約を結んでいると考えられています。そのため、特に都市部などでは礼金について設定しないというケースが一般的になっています。

敷金・礼金を設定する場合の相場や金額は?

敷金・礼金をどうしても設定したいと考える場合、どの程度の費用相場を考えれば良いのでしょうか。

実際問題、敷金・礼金の相場は地域や周辺の競合物件の有無などによっても異なります。例えば、周辺に「敷金・礼金ゼロ」の競合物件が複数あれば、敷金・礼金を設定しないか、設定するにしても礼金はゼロにして敷金のみにするといった考え方があるでしょう。

なお家賃滞納や退去時の保証金として敷金を考える場合、家賃の1~2ヶ月分くらいが相場となっています。

入居条件で敷金・礼金をなしにするメリット・デメリット

入居者を募集する上で敷金・礼金をゼロ円にするメリット・デメリットはそれぞれ複数存在しており、メリットとデメリットをきちんと理解した上で経営戦略を立案していくことが大切です。

「敷金・礼金なし」のメリット

敷金・礼金をゼロ円にするメリットは、何よりも入居者に対して部屋を借りる際の経済的・心理的ハードルを下げられる点です。

マンションやアパートを借りる場合、入居者は引っ越し費用や新生活を始めるための費用の支払いなども考えなければならず、経済的に負担がかかりやすくなっています。そのような状況において、さらに家賃数ヶ月分の敷金・礼金を支払わなければならないとすれば、仮にその部屋を借りたいと思っても経済的に借りられないというケースが生まれやすくなります。

「敷金・礼金なし」のデメリット

敷金・礼金をゼロにするデメリットとして、まず賃貸契約時の現金収入が減るという点があるでしょう。敷金・礼金があれば単純に契約時点で現金を得られるため、キャッシュフローの安定にとってはプラスになります。加えて敷金をなくしてしまうと。家賃滞納時や退去時の修繕トラブルといったものに備えるお金がなくなることも重要です。

そのため、敷金・礼金がない場合、入居者とのトラブルが発生した際にオーナー側の経済的負担が増大してしまう可能性があります。

マンション経営の敷金・礼金に関連してよくあるトラブル

敷金・礼金が空室リスクなどに影響することはすでに説明しましたが、それでは実際に敷金・礼金のせいでどのようなトラブルが起こりやすくなるのでしょうか。ここでは敷金・礼金を設定した場合に想定されるトラブルの代表例を紹介します。

原状回復費用の負担割合と返金額

敷金は通常、退去時の部屋の修繕や補修といった「原状回復」のために使われます。そのため、仮に敷金として受け取っている金額よりも原状回復費用が安ければ差額を返金しますし、敷金で不足していれば追加で入居者へ退去費用を請求するという形です。

しかし、実際には部屋の汚れや損耗についてオーナーと入居者のどちらが補償すべきかでもめることも多く、原状回復費用の負担割合や返金額を巡ってトラブルになることも少なくありません。

敷金の返金タイミング

敷金はオーナーに返金義務のあるお金ですが、どのタイミングで返金するのか事前にきちんと把握しておく必要があります。

原則的に敷金の返金は賃貸契約終了後に速やかに実行されます。

ただし、賃貸契約中の家賃滞納やトラブル、原状回復の有無や負担割合などによって返金すべき金額が変わることもあり、そのような費用の精算を迅速に行った上で速やかに返金・清算しなければなりません。

敷金・礼金にまつわるトラブルやリスクを回避する2つのポイント

敷金・礼金に関連したトラブルやリスクを回避するためのポイントとして、少なくとも2つの対策を覚えておきましょう。

敷金償却(敷引特約)の設定

敷金償却(敷引特約)とは、敷金の返金の額に対する控除について事前に定めておく契約です。賃貸契約の終了時に、原状回復費用とは別に敷金から差し引きするお金について定めるものです。例えば、敷金15万円で敷金償却費(敷引額)が8万円に設定されていれば、そもそも差額の7万円しか返金する義務がありません。

  • 返金対象になる敷金の額=敷金として預かった金額-敷引特約で定めた金額

ただし敷金償却(敷引特約)が認められるためには、あらかじめその内容について賃貸契約書に明記した上で双方が合意し、また通常損耗に対する原状回復費用を敷引額が超えないようにするといった注意点もあります。

賃貸管理業務の適正化

そもそも敷金トラブルが起こる原因として、入居者が退去する際の賃貸物件の立ち会い確認時における、「この部屋の損耗については自分が入居する前から発生していた」とか、「入居時点で傷ついていた設備なので自分が修復する義務がない」といったやりとりが挙げられます。

言い換えれば、入居者へ部屋を貸し出す前にきちんと現状確認を行えていなかったことに起因するため、賃貸管理業務を適正化して根本的に相互の認識の違いが生じにくい状況を獲得しておきましょう。

また必要に応じて写真などを撮影しておき、客観的に明示できる証拠として保存しておくといったことも有効です。

まとめ

マンション経営やアパート経営において、大家やオーナーが入居者よりも有利な立場でいられた時代はすでに終わっており、現代ではあくまでも双方に対等な賃貸契約にもとづいて賃貸物件の貸し借りが行われます。また退去時の原状回復費用トラブルなどについても広く知られるようになり、敷金・礼金の概念や取り扱い方そのものに変化が生まれています。

そのため敷金・礼金のメリット・デメリットも考慮した上で、設定の有無や契約時の条件などを検討していきましょう。

【目的別】マンション建築おすすめ業者3選

地活用で安定収益を目指すなら、マンション建築は複数戸供給による高収益性と資産価値の維持が期待できる有力な選択肢です。
ただし成果を大きく左右するのは業者選び。施工力や管理体制に差があるため、信頼できる会社を見極めることが投資成功の鍵となります。
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(※) ・全国平均95.3%(2022年度)
参照元:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所「27回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』」https://www.jpm.jp/marketdata/pdf/tankan27.pdf
・クラスト入居率96%(2025/09/01調査時点)
参照元:クラスト 公式HP https://www.clast.co.jp/lp/
・管理費は2025/09/02時点の情報をもとに調査しております。

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