賃貸マンションを経営する上で知っておくべき借地借家法

借地借家法とは、土地や住宅などの不動産を貸し借りする賃貸契約に関連した法律であり、マンション経営のように賃貸物件を活用した不動産投資へ携わるのであれば必ず知っておくべき法律といえます。このページでは借地借家法について解説します。

借地借家法とは?

借地借家法とは文字通り土地や家屋の貸し借りに関連した法律であり、1992年施行の民法における特別法です。借地借家法ではそれぞれ、マンションのオーナーのように賃貸マンションなどの賃貸物件や土地を貸す側を「賃貸人」、マンションの部屋などを借りる側を「賃借人」として、主に賃借人の権利や利益を保護する目的で制定されました。

ただし、借地借家法による賃借人の保護が強くなったため、逆に賃貸人にとって不利益な状況が生まれてしまった状況を改善するため、2000年3月1日に一部が改正され、新しい制度として「定期借家制度」も誕生しています。

※参照元:e-Gov法令検索|借地借家法

借地借家法による賃貸契約と一般的な「もの」のレンタルの違い

例えばレンタルDVDやレンタカーといった「もの」の貸し借りに関しては短期間のレンタル期間を定めることが一般的です。しかし、住居となる賃貸住宅についてはある程度の長期にわたって暮らすことが前提として考えられており、基本的には短期間で契約満了になることはありません。

そのため、借地借家法では一般的な民法による賃貸契約とは考え方を変えなければいけません。

賃貸契約の期間

賃貸マンションなど賃貸住宅の契約期間は、原則として1年以上となっています。例外的に1年未満の賃貸契約を結ぶことも可能ですが、それは1年以内に建物の取り壊しが決まっている場合や、1年以内に改築・改修が予定されていてそのタイミングで退去が必要な場合などに限定されています。

これは短期間の賃貸契約により、賃貸人が賃借人を一方的に追い出して不利益を与えるといった契約や行為を防止するために想定されており、通常の個人住宅であれば契約期間は2年もしくは3年程度になることが多いでしょう。

契約期間満了における取り扱いと自動更新の原則

通常のレンタルサービスであれば、1週間のレンタル期間を定めている場合、それを過ぎれば賃貸人は賃借人に対してレンタル品の返却・返還を請求することができます。また賃借人は賃貸人に対してレンタル期間の延長や契約の更新・再更新などを請求しない限り、そのレンタル品を返却しなければなりません。

一方、借地借家法において住宅などの賃貸契約は自動更新が原則となっており、契約期間が満了しても賃貸人と賃借人の間で特別な合意などがない場合は、契約はそのまま延長されます。

これにより、賃借人が申し出ないからという理由で住居から追い出されるといったリスクを防止することができます。

マンション経営者として知っておくべき借地借家法の基本ポイント

前提として、賃貸物件の貸し借りでは家賃などの入居条件を賃貸人が自由に決めて入居審査などを行えるため、賃借人よりも賃貸人の方が有利な立場にあるといえるでしょう。そのため、借地借家法は両者の立場の不均等を解消する目的で制定されており、言い換えれば借地借家法にもとづいた賃貸契約では「賃借人の方が保護される」という点が重要です。

普通借家権と定期借家権

そもそも「借家権」とは、マンションやアパートといった物件に対する賃借権のことであり、基本的に賃借人へ有利なものとして規定されています。

  • 登記がなくても賃借人として家屋の引渡しを受けた場合は第三者に対抗できる
  • 賃貸契約の解約や更新拒絶には正当な事由を必要とする
  • 契約満了時の造作買取請求権を賃借人へ認める
  • 条件を満たす同居者に対して賃借人からの借家権の継承が認められる

これらをまとめると、入居者が賃借人として物件を借りると、賃貸人であるオーナーは正当な事由なく入居者を追い出せなくなり、また賃貸物件を第三者へ売却しても賃借人の権利は引き続き認められるという状態になります。

そして借家権はさらに「普通借家権」と「定期借家権」に分類されることもポイントです。

※参照元:e-Gov法令検索|借地借家法

普通借家権

普通借家権は一般的な賃貸借契約における借家権であり、契約期間は1年以上で賃借人が希望すれば契約は自動的に更新され続けます。

定期借家権

普通借家権による賃借人の保護が強いため、改めて賃貸人の権利を認めるため2000年3月1日に設けられた借家権です。定期借家権の場合、普通借家権のように契約期間の下限がなく、特定の条件を満たせば賃貸借契約の中途解約も可能となっています。

一定期間だけ物件を貸し出し、その後は退去してもらいたい(返還してもらいたい)といった場合に有効です。

反面、定期借家権は賃借人にとって入居期間を延長できないといったリスクもあり、入居者を募集する際には家賃を下げるなどの工夫が必要です。

家賃の変更

原則として、家賃の変更には正当な根拠が必要であり、オーナーが一方的に家賃を値上げするといったことはできません。ただし定期借家権にもとづいて契約する場合、契約書に明記された特約に従って家賃の増減を行えるといったルールもあります。

なお普通借家権による賃貸借契約では、消費税などの増減によって土地や物件の価格が変動したり、周辺の相場と比較して現在の家賃が不相当になったりした場合などに、賃料を変更できる可能性があります。

賃貸契約の自動更新

借地借家法では賃貸借契約は自動更新され、これは「法定更新」と呼ばれるルールです。一方、賃貸人が入居者である賃借人に対して契約終了を求めるためには、正当な事由が必要であり、場合によっては立退料の支払いなども必要です。

なお賃借人が契約更新を希望しない場合は、一定期間前にその旨を賃貸人へ通知しなければなりません。

立退料を支払えば契約は終了できるのか?

賃貸人から契約更新を拒絶する条件として、立退料の支払いを提示することもできます。ただし立退料を支払いだけで「正当な事由」になるわけでなく、賃借人に拒否されれば契約終了が困難になることもあるでしょう。

逆に、正当な事由がなくとも、賃貸人と賃借人の双方の合意があれば、立退料の支払いで契約を終了させることは可能です。

賃貸人と賃借人が負う義務

借地借家法ではオーナーである賃貸人と、入居者である賃借人に対してそれぞれ義務を定めています。

例えば賃貸人は、入居者が安心して暮らせるために物件の状態を適切に保たなければなりません。それに対して、賃借人はオーナーへ入居条件である家賃を支払い、また第三者へ無断で転貸することもできません。

借地借家法は賃借人に有利とされるものの、決して賃借人が無制限・無条件に物件へ住むことを認めるものではないことを覚えておきましょう。

まとめ

借地借家法は、マンション経営のような賃貸物件を使った不動産投資において要となる法律であり、オーナーと入居者は借地借家法の定めに従って賃貸借契約を結びます。そのため契約の終了や中途解約、契約期間中の義務なども借地借家法にもとづいて考えなければならず、賃貸人としてリスクマネジメントを意識していくために無視することのできない法律といえるでしょう。

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